訪問看護ステーション
回想と傾聴
2022年10月03日|訪問看護ステーション|
訪問看護では、離床、歩行運動や気分転換を目的に散歩を行うことがあります
空を見上げることで、空の色や雲の流れや変化、季節の草花の移り変わりなどを楽しんで頂けています
普段と違う場所で話をしていると、思わぬ話を聞かせてもらえることがあります
その時の忘れられないエピソードは、認知症に対する回想法と傾聴の意味を改めて気づかされた日でした
数年前の8月の暑い日、その日も車いすで散歩に出かけました
普段から物静かで口数も少ない方で、その頃は表情も乏しくなり自分から話すことも減ってきていました。
散歩していると、突然、「天気のいい日は嫌いだ。」とはっきりした口調で話始めました。
無理に誘ってしまったことを謝り、散歩をやめて引き返そうとすると、「原爆を思い出すから… 士官学校を出たばかりで… あの日の朝も暑くて… こんな青空の日だった… 」と思い出すように少しづつ話してくれました。
その後、その原爆投下後の惨状の中、広島を後にして実家に帰るまでの話も話してくれました。
辛い話を思い出させてしまったことを謝罪すると、「ここに来なければ一生思い出すこともなかったね」と、久しぶりに笑顔を見ることができました。
その笑顔で少しだけ気持ちが楽になったのを覚えています。
この話をしてくれた人は、そんなことがあったことも忘れてしまっていると思いますが、今も青空を見るとその時の事を思い出します
看護師 渡瀬